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誤射かもしれない
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 ぱちぱちありがとうございます!


 表題誰得。じわじわかきなぐっていたラッ/キードッ/グ1を下敷きにしたというかラッキーわんわんという呼称を流用した海城小話。続きも悶々と考えてるけどたぶん日の目を見る日は来ない。
 冒頭は元ネタゲームのパクリオマージュですのでご了承ください。



 運の良い奴だ、と誰もがオレのことを言う。
 両親が死んだのは、オレがまだロクに歩けもしないガキの頃だった。突然、見知らぬ相手にブチ殺された。一人息子のオレだけが無傷で助かり、両親の死体の傍で泣いていたそうだ。
 それから今の家で面倒を見てもらうようになった。ときには食い物ももらえなくて腹が空いて仕方ないときもあったけど、新しい両親は優しくしてくれたし、妹だってできた。
 悪ガキから自他共に認めるシスコンに育ったが、ごたごたあって町中をたむろしてるような、俗に言う『よくない連中』とつるむようになった。以来、家と童実野町界隈とを行ったり来たりしているが、特に苦労なんて感じたことはない。既に、どこぞの路地裏で夜を過ごすのは趣味でもある。
 何故だかオレは、町の連中に可愛がられる機会が多くて、割りとずっと、良い立ち位置で過ごせていた。他の連中にゃ、羨ましがれてる。
 ……オレは昔から、探し物や尋ね人を、不思議なくらい難なく見つける。拾い物も多い。歩いていて、でかいダイヤの指輪を踏ん付けたこともあった。
 それに親父が馬券を買うのに付き合った時は、絶対に当たる。オレを連れた親父が買うと、こぞって周りが便乗するので、オッズが下がって困るぐらいだ。
 乗っけてもらってた車が塀に突っ込んだことがあるが、上手い具合に放り出されて無傷だったのを見て、誰もが感心した。
 ちょいと付き合った女が孕んだこともなけりゃ、その旦那に見つかって首を絞められたなんてこともない。
 顔も覚えていない親の形見で、金の飾りのついた首飾りがあるんだが……誰かの悪戯で取られちまっても、何かの騒ぎでなくしちまっても、何故か必ずオレの手元に戻ってくる。
 ――そんなこんな、自分じゃ気付かないこと、忘れちまった話も多いんだが。他の連中から見たオレは、ズバ抜けて運が良い男……らしい。
 おかげで知らぬ間に、妙な二つ名までついちまったくらいだ。
 親につけられた名前は克也。普段は、今の親父から貰った城之内の名前で呼ばれてる。
 もう一つの名前は――――――


「ラッキードッグ」
 ごつい手で首根っこを掴まれぶら下げられたオレを、えらそうな椅子に座った男はそう呼んだ。オレの耳の先から尻尾の先までじろじろと無遠慮に睨みつけている。オレは首根っこを掴む手から逃れようとじたばたもがくが、びくともしない。
 暴れるオレなどどこ吹く風でごつい手の持ち主は睨む男に返す。
「と、呼ばれているようですが……どう致しますか、瀬人様」
 せと、と呼ばれた男は、やっぱり偉そうにフンと鼻を鳴らした。
「捨てておけと言いたいところだが送り主が送り主だな。ラッキーだのジンクスだの非ィ科学的な…」
 いつも通り路地裏をうろついていたオレが、いきなり何人かのおっさんたちに囲まれたのが昨日。捕まえられそうになって暴れたけど、でかい人間のおっさんたちに一気に押さえ込まれてちくっと刺されて、気が付いたら檻に突っ込まれてた。そのままペットショップみたいなとこに連れて行かれて丸洗いされて、ここに連れてこられたのが今日だ。オレを飾り立てたおっさんは、ニコニコしながらぴかぴかに磨かれたオレをせとの前に連れ出した。貴方にラッキードッグの幸運がありますように、とかなんとか言いながら。
 つまりオレは見ず知らずの人間に連れ去られた挙句、これまた見ず知らずの人間へのプレゼントにされたのだ。
 冗談じゃない、オレを何だと思ってるんだこいつら! しかも捨てておけだと!?
 ……腹が立ってしょーがねえけど、いらないならいらないで放してくれる可能性もある。これでもオレには戻らなきゃなんねーとこがあるんだ、自由にしてくれるっていうなら万々歳だぜ。そう考えてひとまず暴れるのをやめた。
 ぶらんとぶら下げられたまませとを見返す。せとは馬鹿にしきった声でこう言った。
「こんな貧弱なチワワでは番犬の足しにもならん、いや、犬と呼ぶのもおこがましい雑魚だな」
『なっ……なんだとおおおおお!!』
 確かにオレは野良崩れで餌だってロクに食えないこともあるし、他の犬に比べるとちょっと痩せてる自覚はある。おまけに小型犬だから番犬なんてエラソーなもんにするには頼りないってのも仕方ないと思う。
 けど、オレの意思でもないけど、仮にも誰かから貰った犬に対して、
『雑魚はないだろ、雑魚は!!』
「何だ、雑魚のくせに人並みに文句でもあるのか? いや、犬並みか」
『うるせえ!! 上手いこと言ったとでも思ってんのか!!』
 こんなに噛みつきたい人間初めて見たぜ!
 精一杯声を上げて手から逃れようと暴れるけどやっぱりビクともしない。くそっ、こんなナリでも前は他の野良から“狂犬”なんて呼ばれてたんだ、ステゴロには人間相手だって負けない自信があんだぞ!
 もちろんオレの前の通り名なんて知るはずもないせとは暴れるオレを鼻で笑い飛ばす。……こいつの場合“狂犬”なんて聞いたところで余計に馬鹿にしてくる気がするけどな!
「ふぅん、文字通り弱い犬ほどよく吠えるというやつか? やはりうるさいばかりで役に立ちそうもないな」
『だったらオレを自由にしやがれ!! お前みたいな人間に飼われるなんて冗談じゃねえぜ!!』
「ククッ…雑魚のくせにこの海馬瀬人に盾突くか、面白い」
 磯野ォ!!とせとが叫んでえらそうな椅子から立ち上がる。ここに来て初めてオレをぶら下げている手がビクリと揺れた。はっ!!なんてキレのいい返事が頭の上から降ってくる。
 せとは今までの馬鹿にした笑いとは違う、ニヤリ、としか言いようのない笑みを浮かべてオレに手を伸ばした。噛みつく間もなくゴツイ、いそのとかいうヤツの手からオレを引ったくり、目の高さにぶら下げる。くっ、くつじょくだぜ…!!
 そしてせとはそのまま、嬉しくもないことをものすごく楽しそうにオレに告げた。
「喜べ、この俺様が貴様を飼ってやろう」
『なんっ……だとおおおおおおお!? なんでそうなるんだよ、冗談じゃねえ!! 放せよ!!』
「クッ…ハーッハッハッハ!! 抵抗できるものならしてみるがいい!! 貴様が無駄に足掻けば足掻くだけ己の無力さに絶望することになるのだからな!!」
 高らかに笑いながらオレを片手にぶら下げてどこかへ向かう。背後でいそのが「瀬人様…犬相手にそこまでお声がけなさらなくても…」とか小さな声で呟いてるのがオレにはバッチリ聞こえた。オレの声なんて人間にはわんわん!にしか聞こえてないだろうに、まったくだぜ。こいつはあれだ、きっと変人ってやつなんだ。
 ちくしょう、今までそれなりに幸せな生き方してたってのにこんなとこで行き止まりなんて冗談じゃないぜ! いつか絶対逃げ出してやるからな! そう決意したオレはせとに首根っこを掴まれたまま暴れたけれど、やっぱりビクともしなかった。





 リアルわんこ(※チワワ)城之内くん。
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