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誤射かもしれない
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 拍手ありがとうございます。



 以下、BBネタバレ。現時点の解釈と勢いのみ。






 月が落ちてくる。

 そういって泣いたのは誰だっただろう。自分だったか、それともあいつだったか。兄ではない。兄は意味わかんねーよ、とか、そんなわけねぇだろ、とか、呆れながら、それでも泣きつく誰かを乱暴な手つきで慰めていた。
 あのやさしい腕。うで。乱暴だけれどあたたかいそれ。
 
 あか の中に ころがって
 無骨な剣を 握って
 くろい けもの の輪郭で

 しつこくじゃれつく自分をやわらかく押しのけた
 泣きじゃくっていれば何もいわずに触れてくれた

 あの

「――――」
 眩しい。夜空の月があまりにも眩しい。綺麗で綺麗で涙が止まらない。黒い夜空に白くやさしくやわらかく輪郭を描く天体。広い宇宙の一粒にしか過ぎないそれはひたむきに空を塗り替えようとしているようにも見える。冷たい空をやさしいいろに。そんなわけがないのだけれど。
 唯一動く右腕で視界を塞ぐ。あの白が目を灼くのだ。ちがう、本当は直視できない。
 そんなことはできはしない。無駄なのだ。たった一粒の白は広大な夜空であまりにも脆弱に輝く。ゆえに強く美しい。だから胸が痛い、涙が。
「にいさん」
 殺さなければならない。殺してあげなければならない。兄さんだってそれを望んでいるのだから。でもできない。
「にいさん、にいさん」
 生まれる。もうすぐ生まれる。
 幾度でも殺そう。この手で屠ってみせる。
 けれどできない。
 だからといって止めるつもりはない。兄さんを殺すのは自分だから。他の誰でもない。でも、できない、と知っていて、何度も何度も刀を振るって、そんなことはもう無理だとも思う。あの月のように美しくあろうとは思わないけれどひたむきに強くあることもできない。涙が、
「――兄さん」
 これは誰の涙だろう。これは誰の思考だろう。落ちてくるあの白い光。こわい、あんなにつよくうつくしいものはこわい。でもあの強さを手に入れなければ兄を殺すことはできない。殺さなければ、自分は、彼を、殺さなければ――

 さくりと草を踏む音。


「本当の英雄になりたくはなくて?」


 現れたのは月の遣い、だったのかも知れない。
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 Sound Horizon Live Tour 2009 - 第三次領土拡大遠征 - 横浜公演
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2013年3月14日
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2015年6月28日
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